RETOUCH, before and after

たとえサムネイルでも撮って出しはしない(笑)こだわりのデジタル派シエナが、「草千里」シリーズのビフォア&アフターで、シエナ流ナチュラルレタッチをご紹介します。

SilkyPixで肌に露出を合わせて現像した今回の画像です。
現像と言っても実は元がRawデータではないので、明るさやコントラストを調整しているだけです。


風に乱れるのを気にして、サティが手で髪を束ねた一瞬、絶妙なショット!!
…もちろん、まぐれ当たりです。 顔にピンを合わせて機関銃のように切っていた…って、いつもそうですが(笑) …一連のポーズ中の一枚です。

如何せん、空が白トビしてます。



オートで現像しなおすと、肌はくすみますが草の色や中景のコントラストがキレイです。空はまだトンでます。そしてあれ?妻がカメラバッグの上にたたんで重ねたワンピースが右の方に写りこんでしまっています。 言わなければ気づかないほどですがナチュラル派のボクたちとしてはタイヘン困ったことです。呼吸を合わせて、いちにさん、それ!!という感じの現場なので、このヘンどうしても行き届きません。 画面の左にはツキミソウが揺れています。



さらに暗く調整すると、高岳の後ろに根子岳の美しい山容が姿を現しました。

もともとここをサティ場に選んだのは、雄大な阿蘇連山のパノラマを背景にしようと思ったからです。
山をトバしてしまっては、リスクを覚悟でがんばった意味がありません。


よく、「レタッチした画像はもう写真じゃない」とおっしゃる方がいます。「実景」ではないから、「真」を写してないということでしょうか。それならば、レフを使って光を反射させたり、リングストロボでキレイなハイライトを目に入れたり、ハーフNDで空だけ暗くしたり、そういうのはみんな実景ということになるのでしょうか。

どうも「実景」の定義が、ボクとその人たちとではちょっと違うようなのです。ボクにとって「実景」とは、その場で自分 が見たまんま、主観的な印象の風景です。だからそれを再現するためにレフやストロボを使うこととレタッチすることは、どちらも単なる手段として同一のカテゴリーにあります。

光だけでなく、たとえば白砂青松の写真を現像してみたら、波打ち際にタバコの吸殻が写りこんでいたとします。…瞬殺です。全く躊躇なく消します。 ボクは砂浜がキレイだなと思ってシャッターを切ったわけで、別に、こんなところにもポイ捨てする人がいるという現実をルポルタージュしようと思ったわけではありません。当然、海にいたときには吸殻に気づいていないわけで、ボクにとって吸殻のある砂浜は実景ではないのです。

その年、真夏の九州を何日も旅していたボクたちは、ある日、宮崎青島の海岸で泳いでいました。砂浜に寝転びながら相談し、あまりにも暑いので山の方へ行こうということになったのです。高森峠を越えて立ち寄り湯に浸かり、草千里の駐車場に着いたときはもう真夜中で、見上げた空高く秋のペガスス座が横たわっていました。

そして翌朝、車で寝ている間に一面に立ち込めていた霧が、朝日とともに少しずつ流れ始めました。霧 をカーテン代わりに利用し、ボクたちは思い切ってサティを決行したのです。霧の間に間に見え隠れする阿蘇の山々は息を飲むほどに美しく、海のようにどこまでも続く草原を風が渡ってゆきます。サティが髪を押さえながら、

「涼しい」

と、言ったのです。裸だから当たり前かもしれませんが、連日のうだるような暑さが嘘のようでした。ボクがサティと一緒に撮ったのは…その風です。


いちばん暗い画像から空や遠景の山の色を抽出し、彩度と明度を上げて明るくします。中間の画像をベースに3枚の写真をレイヤーで重ねて慎重に合成していきます。言わば手動のHDRです。

さらに写りこんでしまったワンピースは草の海に沈んでもらいました。今回、遊び心でツキミソウも一輪植えてみました(笑)

 

 

これが、あの朝、ボクが見たままの実景です。

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